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新英語教育研究会神奈川支部HP

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バイシクル・レース Bicycle Race

■ Bicycle Race Queen No.74 2001.6
 バイシクル・レース (♪クイーン)

■ことばの《音》
 ことばには、意味や音、そしてリズムがある。意味から生じる連想だけではなく、音から生じる連想、すなわち音の喚起力から生まれてくる詩がある。こういった詩は、《意味》にがんじがらめにされた私たちの感性をかろやかに解き放つ効果がある。

 「かっぱ」  谷川俊太郎


 昨年のカンヌ国際映画祭で入賞した映画『ユリイカ』の監督、青山真治は「言葉のリズムやメロディーでしか言えないこともあるし、それでできている人間関係もある」と語っている。まさにその通りで、《意味》を求めることで味気なくなったり、《意味》を決めつけることで、本質を見逃したり、そこから変質したりしてしまう、そんな詩や歌、そして人間関係がある。

■《意味》をめぐっての一考察
 大多数の人々にとって、また、たいていの場合《意味》は1対1対応でハッキリしている。「AはAである」という命題は堅苦しく言えば自同律(同一律)だが、日常的には何のことはなく、「bookは本だ」「私は中学生だ」のように使っている。
 敬愛するレトリック研究者佐藤信夫を倣って展開すると(まことに唐突だが…)、自分にとっては「叔父は叔父」であって「叔父は叔父以外の何者でもない」(叔父がおばさんになったりすれば、それこそ一大事だ)。〈叔父〉はこういうものだと定まっている。このような《意味》の安定は日常生活を送る上での安心となり、人は平穏に暮らせる。
 しかしながら、〈叔父〉が「自分が決めつけていた《意味》での叔父」ではない、ということが起こるのが実人生だ。夏目漱石『こころ』には、学生時代に「叔父は叔父」だから大丈夫と信じて財産を託していたら、使い込まれてしまったという経験談を主人公である「先生」が話す場面がある。「叔父を信じ、正直すぎた自分がくやしい」と嘆く主人公。こうして世間知らずでピュアな若者は人間不信に陥り、かたつむりのように殻に閉じこもる。
 しかし欧米流の人間観なら「正直すぎたというのは言い訳で、叔父に対して無関心だった自分の非を認めろ」と日本人の感傷を一蹴してしまうだろう。
 日本の私たちが学習すべきことは、イアーゴーのような悪人がいて、懲らしめて一件落着というのではなく(そうなら楽なのに…)、人は状況次第で良くも悪くもなるということ。だからこそ、care(気遣い)したり、文脈を読み取ることが必要になる。
 佐藤信夫が論じているように、意味には《弾性》がある。単語の意味が文脈の中にあるとき安定を保つように、人の《意味》も状況で定っているだけ。「夫は夫だ」と盲信して、妻の座にどてっとしていたら、夫はポンポン弾んで出て行ってしまった、なんていうことは世間に事欠かない(逆もまた然り)。「こんなもの」「こうあるべき」と決めつけている、そこの人! まずは自分に矛先を向けよう(うっ、グサッ、と筆者自らが倒れていては先に進まない…)
 ここで大切なのは、盲信か不信かの2極分解に大きく振れるのではなく、《弾性》という持ち味を生かし、型に押し込めすぎず、礼節をわきまえつつ「半信半疑」で臨むこと。(半々ではなく、七三の《七信三疑》? を標準モードとして推奨したい)。
 チャップリンが言うように、人生に必要なのは「勇気と想像力と少々のお金」。弱いピュアな自分を鍛えないと《弾性》に弾き飛ばされるぞ、とハッパをかけつつ、気力・知力・経済力を養うのが教育だ。

■英語の教科書・教材は今こそ猛省を
 昨今の中学教科書ははっきりいってマズイ。例えば、会話文では、内容は多国籍で語彙レベルが異様に高い。話題も完結しないこともしばしばで、文体は骨抜きで無機質。不自然な栄養補助食品のようだ。
 新出文法事項を折句のように無理矢理に入れ、書き換えた際にリズムや文体を無視した物語文。これこそ味気ない流動食で、本当の味が判る舌が育たない。ゆくゆくはあごの細いジャニーズ顔のひ弱な知性が形成されるのではないか。英語の特質を生かした美しくて一貫した文体がある、骨太で「美味しい」の英詩・歌・物語文を常食としてほしい。
 話題を本筋に戻すべく、例えを自転車に乗りかえると(ふーっ、やっと戻った!)、補助付き自転車ばかりでは「美しさ」「自然なスピード感」を知ることができない。私たち教師が生徒を後ろの荷台に乗せて「ほら、速く走ると、こんな世界が見えるよ」と一緒に疾走することで生徒も《音》や《リズム》、「美しさ」に感応し、今は分からずとも自分で前進したいと感じるのではなかろうか。
・参考文献
 青山真治:読売新聞夕刊2001/3/3
 佐藤信夫『レトリックの意味論』講談社学術文庫
 チャップリン:映画『ライムライト』より
 野崎昭弘『数学的センス』日本評論社:第五話





■ Bicycle Race Queen
 バイシクル・レース (♪クイーン)


■ Bicycle Race Queen
 バイシクル・レース (♪クイーン)

自転車 自転車 自転車
自転車、乗りたい
自転車 自転車 自転車
自転車、乗りたい 自転車、乗りたい
自転車、乗りたい
自転車、乗りたい
好きなところに乗っていきたい

「黒」と言えば「白」
「吠える」と言えば「噛む」
「サメ」と言えば、おや!
『ジョーズ』は見たことないし、
『スターウォーズ』も嫌い
「ロールス」と言えば「ロイス」
「ゴッド(神)」と言えば、選ばせてよ
「ロード(主)」と言えば「キリスト」
信じないよ、ピーターパン
フランケンシュタインやスーパーマン
僕がしたいのは…

*repeat
自転車レースがやってくる
だから、仕事は忘れなよ
太めの娘も、
今日はきっと出場しているよ
だからあのカワイコちゃんたちにご注目!
位置について、用意、ドン!
自転車レース 自転車レース 自転車レース
自転車 自転車 自転車
自転車、乗りたい
自転車 自転車 自転車 自転車 自転車
自転車レース
「コーク」と言えば「コカイン」
「ジョン」と言えば「ウェイン」
「ホット・ドッグ」と言えば「そんなに熱くならずにね」
アメリカ大統領にはなりたくない
「笑って」と言えば「ハイ、チーズ」
「カルティエ」と言えば「どうぞ」
「所得税」と言えば「ああ、神様!」
ベトナムやウォーターゲートなんかの
候補者にはなりたくないな
だって、僕がしたいのは…
*repeat



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